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【第8章】 『パーティ・タイム(後編)』

池袋乙女ロード・サマー・パーティ・フェスティバル当日。

初夏の快晴のもと、歩行者天国で賑わう乙女ロードは大賑わいの人だかりで、誰もがイベントプログラムを楽しんでいた…けれど、元気一杯のあの子姿は会場のどこにもなかった。あれは数日前のことだった…。

「過労と夏風邪で……ささみちゃんが…倒れた……!」

『いまかかりつけの病院の治療室で点滴受けてます…。ささみちゃんが言ってた『ここ二日間、お休み欲しい』っていう理由なんですけど、どうも休養じゃなくて、コミケ用の原稿に取り組みたかったみたいなんです…。しかも、徹夜もしてたみたいで……とにかく、しばらく安静らしくて、イベントの出場もダメだって言われたみたいです……』

携帯電話越しに聞こえる、あんなちゃんの言葉に私は自分の迂闊さを呪った。そうだ、ささみは同人活動の祭典である、夏コミのブースに当選していたにも関わらず、そのための新作原稿がまだ真っ白だったわ。

 てっきり、乙女ロード・サマー・パーティ・フェスティバルが終わるまでは、後回しにしているものだとばかり思っていた。けれど、あの子の性格を思い出せばすぐに気づいたはずなのだ。あの子は「わかってても気持ちが揺れ動いて、他のことに集中できなくって失敗しちゃうことがあるんだ…あはは」という光景をこれまでに何度か見てきた。ただただ悔しい。こうなることは、すぐに想像できたはずなのに…。私が新作の勝負服で、乙女ロード各店のツワモノとの競演に勝ちたいと思う気持ちに…とりつかれていたせいだ。

「あたし、がんばるからっっ!! もう全っっ開っっで、がんばるからねっっ!!!!」

 最近、口癖のように言っていた言葉と満面の笑顔にどれだけ助けられただろう…。実はマスターから頼まれて、やる気も十分あったけれど、実際に取り組んでみたものの何もかも手探りで、果たして自分は正しいことをしているのか、いつも不安だった。その気持ちをささみちゃんに打ち明けると、元気一杯な笑顔で「大丈夫だよっ! 間違ってないよっ!! ドンっっといってみようよっっ!」「ダメだったら、二人で『ごめんちゃいっ!』って謝っちゃえばいいんだよっ☆」と、気持ちを楽にしてくれた。

ささみちゃんのがんばり屋さんなところが大好きだったし、それによりかかっていた自分がいる。安心できたんだ…どんな時でも笑顔を絶やさず、いつも前向きなところに。

これまでにも「乙女塾」のお仕事中で、悪酔いしたお客さんにも笑顔をふりまいて店内の雰囲気を、いつも明るく楽しいものに操ってきたのはあの子だった。私にはできない「人のよさ」をあの子はもっている。セセリもシシトウも「あの子を嫌う子なんて、一生現れない気がする…」と、言い切るほど誰とでも仲良くなれる気さくさがあの子にはある。一度、聞いてみたことがあったな。

「ささみちゃんには、苦手な人なんていないんじゃなくて?」

「そんなことないよー。苦手な人は、いるよー。あたしだって人間だもん。…でも、たくさんの人たちのいる世界で、運命だかなんだかわかんないけど知り合えたんだよ? なのに『嫌い』で終わっちゃったら、なんか『勿体無いっっ!!』って思っちゃうんだ。その人の一部しか知らないかもしれない自分に何がわかってるのさっっ…って、考え直して、絶対、その人のいいところを見つけ出してやるって、思っちゃうんだよねっ!」

 …そんなひたむきなささみちゃんは聞き上手でもあった。相槌がうまく、自然に相手の本心を引き出す天才だと思う。相手が何を伝えたいのか、その思いを引き出す才能。私が…どんなにがんばっても出来ないことだ。これまでにも不器用なせいで、言わなくちゃいけない気持ちを言い出せないまま、過ぎていった時間がいくつかある。苦い思い出がよみがえりそうになったので、軽く頭を振った。

 そういえば、ささみちゃんは誰とでもすぐに親しくなれるけれど…自己主張はいつも最後な子だった。それがわかっていながら…今回は、倒れるまで気づくことが出来なかった…!!

 私はマスターに連絡した。

「エントリー変更でお願いします。…はい、私一人で参加します。もし、これで辞退したら、あの子の泣き顔を初めて見るかもしれないので…」

ささみちゃんのことだから、辞退したなんていえば、「自分のせいだ」と思い込んで、責任に押しつぶされて「乙女塾」さえも辞めてしまうかもしれない。これまでの練習、これまでの気持ち…無駄にはしない。したくない。ささみちゃんの携帯電話にメールを送った。

『今度こそ、ゆっくり休むのよ? 大丈夫! 私なりに精一杯、ささみちゃんの分までステージを素敵なモノに昇華させてみせるから!』

送信した後で、不安が一杯でおしつぶされそうになる。けれど、今頃思っているだろう「あたしのせいで、ごめんねつくねちゃん…」という気持ちを少しでも軽くしてあげたかった。結果をださなくっちゃ…。

「次の方、間もなく出番です。合図を出しますので、あとはステージで思いっきりパフォーマンスしてくださいね!」

ショートカットの可愛いスタッフの女の子が、キラキラと輝いた大きな瞳で誘導してくれた。私は緊張のせいか、気づくとその子に声をかけていた。

「アルバイトで参加しているの? 暑いのに大変でしょう? 高校生さん?」

「あ、中学生です☆ 中坊はバイト無理だから…あたし、実は受験生なんですけど、でもこのイベントはおもしろそうだからどうしても関わりたくて…だからボランティアスタッフで参加してるんです☆ あの…「乙女塾」の代表ってことは、ひょっとして『「乙女塾」の四天使』さんのお一人、ですよね?」

「え? ええ…」

「ち、父がいつもお客さんとして、よくお店に行ってると思うんですけど…すぐ悪酔いしちゃうから、ご面倒かけてると思いますっっ。ごめんなさいっっ」

小さな頭を深々とさげられて、私は戸惑った。アルコールを扱うお店では、そのくらいの覚悟がないとやっていけない。私は彼女の両手をとってやさしく微笑んだ。

「気にしなくていいんですよ? あなたのお父様も気持ちを発散させたいんだと思います。そのひとときを当店で過ごせるなら、働き甲斐があるというものです」

ささみちゃんなら、もっと親しみをこめて伝えられるだろうに、私にはそれが上手く伝えられないのが悔しい。それでも彼女になんとか思いは伝わったようで、私の両手をグッとつかむと、澄んだ瞳に見つめられたまま宣言されてしまった。

「わ、私もっ! 『乙女塾』でアルバイトできるようになったら、応募しますっっ! それまで働いててくださいねっっ!!」

喜ぶ彼女の笑顔が一瞬、ささみちゃんを思い出させた。寂しさを追い払うために、彼女から視線を避けてスタッフTシャツのネームプレートに目をやる。溝口 凛と書いてあった。溝口さんといえば…確か娘さんが高校受験でナーバスになっているせいか、家の中でも距離をおかれてさびしがっていた人だったかしら…。それにしても容姿に違わず綺麗な名前…と、思っていたら「そろそろ出番ですよ! 応援してますからっっ!!」と、彼女のエールに送られ、私は一人ステージに向かった。

 私がステージに現れると、集まっていた満員のギャラリーの人々からどよめきがおこった。「つくさみ」の衣装じゃないせいだ。夏らしく白を基調に仕立てた服装ではあったけれど、長い髪を動物の耳に見えるように、頭の上のほうで二つのお団子に結って、ミルク色のシニョンキャップでくるんでいる。私の耳の部分はヘッドフォンを改造して機械チックに加工して覆うようにした。けれど、女の子らしさを出すために、イヤリングを二組装着している。内側にパステルピンク、外側にマリンブルーの色をしたクリスタルイヤリングがゆらめいている。「つくさみ」用にささみちゃんが選んでくれて一緒に二人で買ったおそろいのイヤリングだった。胸には私が選んだハート型のブローチがささみちゃんの分と合わせてキラキラと輝いている。

 他に目立つところと言えば、腕と足の一部に生地のように薄いフルカラーの液晶パネルがあって、不規則な虹色の灯が明滅している。けれど一番目立っていたのは、尻尾だと思う。特大サイズのシマリスの尻尾…そう、私は動物で大好きなホワイトシマリスと機械チックな女の子型ロボットというイメージを膨らませて、急遽仕上げた衣装で登場した。

 ステージにあがると、まず衣装の説明をしてそれが終わると歌がはじまる段取りになっている。私は緊張のあまり震える片手でスタンドマイクを握ると、小さく深呼吸してから説明した。

「『乙女塾』代表の…つくみです」

ささみちゃん…名前を一文字借りるわね。私は説明をはじめた。

「…コンセプトは生命体として生まれてきたかった動物型アンドロイド…ホワイトシマリスをベースにした『シマリス姫』という、ちょっと強引な設定の架空のキャラクターです。…ある純粋な生命体と恋をして『同じ時間を生きていたい』という想いから、人工生命体である自分のさびしさを表現しました。製作したキッカケは…小さい頃からシマリスが好きだったことと…ある歌姫が参考になりました」

ここでネオサンシャインシティ内にある時計台の時報の鐘が鳴り出す。偶然のタイミングに私は感謝した。

「…その歌姫と共演できることを光栄に思いながら、歌います」

きっとスタッフたちは動揺していたに違いない。もし、時報と重なったら、それが終わるまでMC(トーク)でつなげて欲しいという打ち合わせがあったからだ。それほどまでにあの歌声は乙女ロードまでも優しく奏でて響き渡り、人々を包み込む不思議な力があった。

La La Lahhh…

観客のどよめきが今度は驚愕に変化する。私は時計台の歌姫、自動人形のアルテミスの歌声と自分の歌声を一つに重ねた。アルテミスの優しい唄声が…一人ぼっちでいる不安を強さに変えてくれるような気持ちにしてくれた。時計台の歌姫はいつも一人ぼっちでいるのに、なんてやさしい唄を聞かせてくれるんだろう…そう思った。

 ささみちゃんのいない不安を取り除いてくれたアルテミスに感謝した。急遽一人でエントリーの変更をしたにも関わらず、最初はアイデアが浮かんでこなかった数日前を思い出した。

「好きなものを表現しよう…」

夏だけにシマリスのコスプレだけでは毛皮がメインになってしまい暑そうに見えて限界がある。もっとこう、すずしくて冷たいカンジのものを取り入れて、バランスがとれないだろうか…? 自分の部屋で悩んでいたとき、聞こえてきたのがアルテミスの歌声だった。自動人形なのに、なんて澄んだ優しい歌声なんだろう…。瞬間、アイデアがおりてきた。そうだ! ロボット! 動物と女の子型ロボットの組み合わせってどうかな…おもしろいかもしれない! そうして私はアイデアを広げていった。

…静かに時計台の歌姫とのデュエットを歌い終えた。すると一瞬の静けさの後、拍手がわきおこった。私は深々とお辞儀した。ありがとう、アルテミス。

「ありがとうございます。では聞いてください『Pure Heart −秒針(とき)の音色−』」

イントロが流れ出した。

「つくさみ」の衣装を着て、一人で『SunShine Dream』は歌えなかった。だから私は…過去におきざりにしてきた気持ちで、日記に一度だけ綴った詩を歌詞におこして作詞した。

 たった一人、その思いを打ち明けた光景が頭の中でよみがえった…。

「…『乙女塾』で働く前に、片思いしていた人がいたの。けれど、思いを伝えられないまま、その人は留学しちゃって、遠く離れていっちゃった…」

「そうなんだ…」

ささみに話したのは、私がまだ「水鳥」という苗字、あの子が「鳥居」という苗字で「乙女塾」で働きはじめたときのことだった。

「小学校からずっと一緒でね、その上、クラスもずっと一緒だったの。中学もそう。高校もそうだったわ」

「ひゃあ、それってスゴイねー! なんだか運命カンジちゃうよー☆」

「そんなロマンチックじゃなかったのよ? …よくお互い言い合ってたわ。『またおんなじクラスかよー』『不思議だよね』って。そんなに親しかったわけじゃないんだけど…いつの頃からか、気がつくと視線の先で探していたの…彼のことを」

「やっぱりロマンチックじゃないっっ☆ あー、もう、やめたっっ! いま描いてる原稿捨てて、その話をいただいたっっ☆」

「なっ!? 40ページの読み切りで、あと1ページ仕上げたら完成なのよ? 何言ってるのっ!!」

「だってー、そっちの方が、いい作品になりそうなんだもん! 原稿にして、いいよねっ☆」

「だ・め・で・す!」

ささみちゃんのお部屋で、新作の原稿のお手伝いをすることになったのは、私が「乙女塾」の開店前に、店頭に飾るホワイトボードにイキオイあまって、いろいろとイラストやデコレーションのデザインに凝って仕上げてしまったせいだ。それをささみちゃん…鳥居さんが見ていた。

「上手だねー! …水鳥ちゃんって、絵が描ける人なんだ☆」

「パソコンで、ちょっとだけ。何度でもやり直せるから、時間がすぐすぎちゃって困っちゃうけど…」

「えー、ダメだよー。やっぱりイラストは一発勝負の生原稿にガリガリ魂こめて、描ききってこそ、価値があるんだよっ☆」

「あら、でもデジタルのカラー原稿は表現も無限大だし、綺麗よ? 保存も楽だし…」

「アナログの経験を、いっぱい積んでこそっ、画力の上達になるんだもんっ!」

「…デジタルスキルをこなせれば、創作力の幅がひろがります!」

「水鳥ちゃんは『アナログ愛』が足りないっっ! あたしが教えてあげるよっ!」

「あら、鳥居さんだって、デジタルに偏見があるみたいに伺えるわ。その良さを知るべきです!」

「アナログだよっ!」

「デジタルですっ!」

後日、お休みのときに、私がスキャナーとタブレット、それにノートパソコンを一苦労しながら持参してみると、ささみちゃんのお部屋は、締め切り直前の原稿に悪戦苦闘している修羅場が蔓延していた。

「あはは、ははっ。ご、ごめんねー、原稿でおとしそうでさー、徹夜しちゃったっ☆」

ボサボサの髪、床にころがっているるスタミナドリンクの空き瓶たち…私はあきれて何もものが言えなかった。

「アナログvsデジタルの決着はまた今度ね。…アシスタントしてあげるから、手伝えるところ、教えなさいっ!!」

 そうして手伝いはじめて、しばらく時間がすぎた作業中に、ふと恋愛の話になったのがキッカケだった。いま考えても、なんで初対面に近いささみちゃんに打ち明けたのかわからない。けれど、確かにあのとき、急に気持ちが楽になったのを覚えている。

「…わかっていたのに言い出せなかったわ。彼の夢を応援したかったから」

留学してかなえたい夢を聞いたとき、私は言葉にできなかった。「行かないで」「好き」…そんな気持ちがあふれていたのに。恋愛話で元気を取り戻したのか、ささみちゃんが激励してくれた。

「大丈夫だよっ! いつか日本に戻ってくることもあるはずだから、そのときコクっちゃえっ!」

「でも…もし、そのとき、すでに恋人がいたら?」

「あうぅ…じゃ、じゃあ! メールしちゃえっ☆ いますぐだっ!」

「そ、そんな…こ、こわくてできません」

「あ、でもメルアドは知ってるんだ!」

「日本から出発する前に、お、教えてもらったから…」

「それって、フラグだよっっ☆ わかったっ、あたしが代わりにメールしといてあげるっ! 携帯はどこだーっ!」

「だめだってーっ!」

 彼への想いを日記に綴ったあの詩…あれを歌詞にしたのは、それしか手元に歌詞らしいモノがなかったからだけど…本当は、あの気持ちに区切りをつけたかったのかもしれない。私はセセリにお願いして作曲してもらった。

「明るい曲調の方がいいと思うんだ。バラードにしちゃうと、いろんなことが思い浮かんで歌えなくなると思うから…」

セセリらしい気遣いがあったからこそ、私は練習のときでも、歌いきることができたんだなあ…と、ステージに立ってみて実感した。私は思いをこめて歌った。


見ていたのは窓の外
耳すませば 秒針(とき)のリズムが
ひとつ ふたつ…

Ah どうして 勇気が出せない

雨が降り出し 涙 こぼれてく

ごめんね そう その言葉だけ
本当は寂しい I want you to be necessary

どうすればいい? わからなかった
初めて 心 開いた… 人だから

 数年間、心にしまっていた私の想いが…一年で一番まぶしい季節の青空に開放されていった…。

 その瞬間、ひとつぶだけ…涙がこぼれた。

 本番まで、練習としては三日間しかなかったけれど…この短い間に、私は、賞を狙うことや衣装で競うよりも大切なことが、たくさんたくさんあったことに、気づいた…。

 拍手がなりやまないステージの上で…私は、自分に出来る精一杯の、元気な笑顔を作って、ゆっくりと深く頭をさげた……。

 私は小さく深呼吸して、ドアをノックした。

「おかーさん? 開いてるよー☆」

マスクでくぐもっていた声ではあったけれど、その元気そうな言葉を聞いてホッとしながら、そーっとドアを開けた。

「お見舞い、遅くなってごめんね?」

久しぶりのささみちゃんの部屋だった。本人はというと、ベッドの中でノートに鉛筆でネーム書いてるところがささみちゃんらしくておかしかった。私の顔を見るなり、動揺して鉛筆とノートを急いで隠しはじめる。

「つっっ、つつっっ、つっ、つくねちゃんっっ!?」

「イベント終わったよ。…これを返しにきたの」

私はささみちゃんのお見舞いに通っていた、あんなちゃんにお願いして、ささみちゃんから内緒で借りていたイヤリングとブローチを見せた。

「えっ!? えええええっっ!? あれっ!? なんで? なんで、つくねちゃんが持ってるのっっ!?」

「あんなちゃんにお願いして、ささみちゃんにバレないように、内緒でそーっと持ってきてもらっちゃったっ☆」

私は珍しくおどけてみせた。

「うそーっ!? じゃ、じゃあじゃあっ! このイヤリングとブローチだけっ、一緒にステージ上がったのっ……?」

「うん」

ささみちゃんはガックリとうなだれた。私はすかさずセセリ直伝の「すかさず抱きつく方法」を実行した。

「つ、つくねちゃんっっ!?」

「閉会式でね、来年も行われることが決定したって報告があったわ! …来年こそは一緒に出場しようね?」

やさしく頭をなでてると、ささみちゃんが強く抱き返してきた。

「うんっ! うんっっっ! ……ごめんね?」

「私のほうこそ、力及ばずだった…」

ささみちゃんからゆっくり離れると、背中にしょっていた小さなリュックからラッピングされた包みを渡した。

「あけてみて」

ささみちゃんがリボンをほどいて包み紙をひろげた。中にはコピックが10本入っていた。

「審査員特別賞だって。10本だけだけど、好きな色を選ばせてもらえたの」

ささみちゃんの顔がみるみる変化した。画材屋に行くと「この色好きなんだー☆」と、手に取っていたのを覚えていたので、それらを中心に好きそうな色をもらってきた。

「つくねちゃん…」

「パーティタイムは来年まで延長よ! …でも、その前に」

「あうぅ、体調を完全になおしまーすっっ」

小さく反省する彼女に苦笑して、私は訂正した。

「違うわよ?」

「へ?」

「夏コミの原稿を完成させないと! …今度は、私がきっちり、ささみちゃんの体調管理もしてあげるから…ダウンしちゃだめよ?」

「つくねちゃん! じゃあ、早速だけど見てもらえるっ?」

ささみちゃんの目がキラキラと輝いた。満面の笑顔を見て、私は、これからまた夏コミまでのまぶしい日々が慌しくなりそうだわ…って、思った。

 そして…ささみちゃんが取り出したノートには「池袋サンシャンDAY」と元気なタイトル文字が書かれていた。

  Special thanks to Madoka Miyazaki as "つくね"(from 『Pure Heart −秒針(とき)の音色−』)

(終わりっっっ☆ Thanks for All!)

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