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【第6章】 『待ち合わせは池袋』 (池袋サンシャインDAY・4)

○サンシャインシティ 地下通路 (夜)

時計台へ続く無人の地下通路を歩く正樹。通路内に正樹の足音が木霊する。

正樹「ここは何も変わってないな…俺達がいたときのままか…ん?」

正樹、通路の壁をコツコツと叩く。壁を力ずくで外すと中には爆弾が詰められていて、

正樹「こいつは、遠隔操作…といったところか。しかしまぁ…デカイなぁ…。池袋ごと爆破するつもりかい?まったく、相変わらずとことんやるやつだなぁ…武よぅ」

複数人の駆け足。正樹の前に黒服でサングラスの男達(SP)が立ちはだかる。正樹に銃を向け、

SP1「中川正樹」

正樹「おや、こいつはサンシャインの。お揃いで夜のお散歩ですかい?」

SP1「動くな。大人しくすれば危害は加えない」

正樹「おいおい、銃を構えてそれはないだろ?相変わらずお前さん方は物騒だねぇ」

SP1「答えろ。今井武と接触するつもりだな?アルテミスをどこに隠した?お前たちの目的なんだ?」

正樹「…そうか、やはりこの先に武がいるんだな?なら、進もうか…過去へ」

SP1「(銃を構えなおし)中川っ!動くなっ…動けば(正樹発砲、SPの銃が弾かれて)…うおっ!?」

拳銃が転がる。歩みよる正樹。

正樹「黒いのがぞろぞろと…池袋のゴキブリどもが。そうさ、昔っから気に入らなかったんだよ…人の周りをカサカサ這いずりやがって。…なぁ、お前ら。どうして俺がこの道を選んだと思うか?暗くて陰気くさい地下通路を?…誰にも迷惑かけず、存分に暴れられるからに決まってんだろお(一人逆ギレ)!」

SPたちの悲鳴。

○中川時計店 店内(夜)

店内を駆け回り正樹を探すあんな、手当たりしだいに引き戸、窓、ドアを開けていく。

あんな「先輩!先輩!先輩っ!いない、どこにもいないよう!…どこに行ったの?嫌だよ!おいてかないでよう!」

店を出ようとするあんな、アルテミスが立ちふさがり、

アルテミスの声「待って!あんなちゃん!」

あんな「!?アルテミス?どいてっ」

素通りしようとするあんなを掴んでとめるアルテミス

あんな「ちょ、手、離して!?アルテミス!」

※ここから先、あんなの能力によるアルテミスとの会話。他の人には聞こえない。

アルテミス「待って!落ち着いてっ!あんなちゃん!」

あんな「…アルテミス?」

アルテミス「良かった!お話できた…あんなちゃん待って。追いかけちゃだめ!危ないの」

あんな「…危ない?」

アルテミス「眼鏡の人に頼まれたの。もしあんなちゃんが自分を探そうとしたら止めてくれって」

あんな「先輩が?先輩はどこへ行ったの?」

アルテミス「わからない。私は普通の人と話すことが出来ないから聞けなかった…けど、多分…」

あんな「時計台ね?」

店を飛び出そうとあんな、アルテミスが引き止め

アルテミス「だめっ!危ないの!…あそこには怖い人がいるのっ!そう、怖い人…優しく微笑んでるはずなのに機械のような冷たい人…。眼鏡の人を呼んで来てって、君が行けばわかるからって…」

あんな「…その怖い人に会いに行くために、どうして私が引き止められなきゃいけないの?…危ないからついて来るなってこと?冗談じゃない!また一人ぼっちにさせられてたまるかー!」

アルテミス「待って!あんなちゃん!落ち着いてったら!」

騒ぎで目を覚まし、よろよろと起き上がる遊人。

遊人「うーん…騒がしいなぁ…一人でなに叫んでるんだい?…(アルテミスを見て)…どわっ!アルテミス!?どうしてここに!?」

引き戸が勢いよく開き、店内になだれ込むSP達。遊人が蹴飛ばされ転がる。

遊人「どわっ!」

○中川時計店(夜)

あんな達を囲うSP

あんな「えっ!?なんですか!あなたたちは!?」

アルテミスの声「あなたたちは…サンシャインの!」

SP2「(無線を使い)こちらβ‐1。いました、アルテミスです。…いえ、目撃者が2人います。…了解(無線を切る)。アルテミスの確保が最優先だ」

アルテミスに歩み寄るSP2

遊人「…んーたた…ちょっと、君達。何やってるの?家宅侵入はいけな(SPに殴られて)いたっ!」

転がる遊人。

遊人「うわぁ、痛いよぉ!父さんにも殴られたことないのにー!」

あんな「署長さんっ!?何するんですか!乱暴しないで下さい!」

SP2「さぁ、アルテミス、来るんだ」

SP2がアルテミスの手をつかんで引き寄せる。

アルテミスの声「…いや…怖いっ、やめてっ!」

SP2「人形のくせに…大人しくしろっ(あんなに手をつかまれ)…ん?」

あんな「やめてください!アルテミスが嫌がってます」

SP2「手を離せ、小娘!」

あんな「嫌です!…先輩の店で…好き勝手しないで!」

SP2「我々の任務はアルテミスの確保が最優先だ。障害は速やかに排除する。もう一度言う、手を離せ」

あんな「…嫌!」

SP2「…そうか、なら死ね」

あんなの頭に銃をあてるSP

アルテミスの声「だめ、あんなちゃん!手を離して!殺されちゃう!」

あんなの声「…先輩…先輩…助けて…先輩!」

勢い良く店内に飛び込むアルマーニ。SP達を次々殴り倒す。

アルマーニ「そい、やあぁー!そいやー!そいやそいや!そい、やあぁぁ!」

SP達の悲鳴とうめき声。アルマーニ(上着)を脱ぐアルマーニ。

アルマーニ「貴様らあぁ!誰の断りなく雑司が谷を荒らしまわっとるかあ!この、ゴキブリどもめぇ!」

SP2「なんだときさまぁ!!」

銃を構えるSP2

あんな「だめっ!アルマーニさん避けて!」

アルマーニ「ふんっ!」

SP2にアルマーニ(上着)を投げつけるアルマーニ。

SP2「うぉっ!服が!?前が見えっ!」

アルマーニ「そいやー!」

SP2「うぁっ、うぁああっ」

発砲するSP2。弾がそれアルマーニ(人)の頬を掠める。アルマーニ(上着)ごとSP2を殴り倒すアルマーニ(人)。SP2が倒れる。

アルマーニ(上着)を拾うアルマーニ(人)。アルマーニ(人)はアルマーニ(上着)の埃を払いながら、

アルマーニ「ふんっ!秋冬の新作に穴ボコが空いてもうたわい!」

あんな「アルマーニさん!」

アルマーニ「おう、お嬢さん、怪我はないですかい?」

あんな「は、はい。あ、いえ!助かりました!…でも、どうしてここに?」

アルマーニ「中川の先生から連絡があったんですわ。黒服の連中からお嬢さんを護ってくれって。ワシらも事情はよくわからんのですが…ここにいても危ないですわ。取りあえずウチの屋敷に来ておくんなせえ」

○石本の屋敷 大広間(夜)

あんな達を屋敷へ迎え入れる石本。構成員達が左右一列に並んでいる。

庭からししおどしが聞こえる。

石本「(驚かず)ほぉ、こいつは驚いた。アルテミス、あんた歩けたんだな」

あんな「…あんまり驚いてないですね?」

石本「ん?…まぁな、サンシャインシティものは胡散臭いもんが多いんでね、多少のことじゃ今更驚かないさ」

遊人「胡散臭いのはお宅らもじゃないか。おかげでこっちは迷惑…ぶつぶつ」

石本「あん?なんか言ったかい?署長さんや?」

遊人「いやいやいや、別になにも、なーんも、はい」

石本「ふんっ。ともあれ無事で良かったなお嬢さん。先生から連絡があってな。感謝なら俺じゃなくて先生にしな」

あんな「先輩と話したんですか?」

石本「まぁな」

あんな「先輩は今どこに?」

石本「さぁな」

あんな「…時計台ですよね?サンシャインシティの」

石本「さぁな。なんも聞いてない。ただお嬢さんを護れと言われた。先生がどこ行ったか俺には関係ないさ」

あんな「関係ない?どうして?」

石本「そいつが雑司が谷のルールだからさ。お互いのことは詮索しない、困ってたら助けあう、借りが出来たら返す、そんなギブ&テイクの付合いさ。…さぁ、おしゃべりはここまでだ。アルマーニ、布団を用意してやれ。お嬢さんと、署長さんもついでだ…ん?」

あんな「ありがとうございました…失礼しますっ」

アルマーニ「ちょ、ちょっと待った!お嬢さん」

あんな「アルマーニさん!?離して下さい!先輩のところに行くんです。私は先輩の力になりたいの、だから通して!」

石本「…聞いてなかったのかい?俺は護れと言われたんだ。自由にさせろとは言われてない」

あんな「…2人で考えようって言ってくれたんです!私は先輩のついていくのっ!せっかく会えたのに、せっかくここまで来て、おいていかれるのは嫌なのっ!」

石本「お嬢さんが行ってどうかなるのかい?むしろ足手まといになるんじゃないのかい?」

あんな「…わかりません。でもっ」

石本「話にならんな。アルマーニ!お嬢さんたちを床の間にお連れしろ。寝かしつけても構わねえさ、外に出すなよ」

アルマーニ「へ、へえ…」

あんな「待って!…じゃあ…連れってください」

石本「…は?」

あんな「護ってくれるんですよね?…じゃあ、私と一緒に来て」

石本「…小娘、俺が笑ってるうちに戯言は懐にしまっときねぇ」

あんな「戯言じゃありません!私は本気です!お願いです、一緒に来てください!」

石本「…行かせてくれないなら連れてって欲しいってか?はは、これだから最近の女子高生は…はは、あはは…ざけんなあぁ!」

あんな「!?」

石本「俺たちは正義の味方ごっこをしたいんじゃねえんだ!乳くせえ小娘の言うことをほいほい聞くと思ったか!たわけが!」

アルマーニ「若頭。お嬢さんも先生のことを思って」

石本「るせえ!黙ってろ!…お嬢さん、雑司が谷で暮らしたいなら言っとくぜ。この石本に軽々しくお願いごとをするなよ。過去は聞かねえ理由も聞かねえ、困ってるなら全力で助けてやる。ただこの石本を動かすにはそれ相応の対価をよこせ!…俺の背中にはな、組の、家族の命が乗っかってんだ。女子供の我がままで家族を危険にさらしたくねえんだよ!」

アルマーニ「若頭」

石本「きゃんきゃん吠えるだけの女子供に何ができるんだ!?ああ?口先だけじゃなく覚悟を見せてみろや!覚悟!」

あんな「(石本を睨み)…私だって家族を護りたいんだもん…(息を吸って)…護りたいんだもん!!」

あんなは畳に手の平をバンと置いて座り、

アルマーニ「お、お嬢!?」

遊人「ええっ!?ちょっと、それって」

あんな「私の覚悟です…石本さんの世界では、対価ってこれでもいいんですよね?」

石本「…ちょっと違うがな。指は落とし前で差し出すもんだが…でもいいのかい?指がない女の子じゃお嫁さんにもなれねえぜ?」

あんな「…さっき死にかけました。これくらい平気です」

石本「平気、ねえ?のワリには足が震えてないかい?お嬢ちゃん」

あんな「…ふ、震えてませんっ」

石本「俺の世界にはハッタリは通じないぞ?」

あんな「うるさい!ちゃっちゃとやっちゃってよ!」

石本「よしきたっ」

懐からドスを取り出し、刃を抜く石本。バンと畳に手をつく。

目をあわせる二人。

石本「…おい、そんなに睨むなよ…照れるじゃねえか、目ぇつぶれよ」

あんな「…はい」

遊人「ちょ、ちょっと、何この展開!?や、やめようよそんな痛いこと、ねえ!?」

アルテミス「やめて!あんなちゃん!そんなの駄目!やめて!」

ドスであんなの髪を切る石本。しゅぱっと。

あんな「んっ!?……え?」

石本「対価、確かに頂戴した。こいつは女の命だな?」

あんな「…石本…さん?」

石本「ふむ…下着は売れるけど髪の毛じゃなぁ…女子高生ものとはいえ。しゃあない、神棚にでも飾っておくか、髪だけに。ほら、アルマーニ、持ってけ」

アルマーニ「へい」

石本「はぁ…小娘に根負けするたぁ…俺もまだ青いなぁ」

アルマーニ「いや、それでこそ俺たちの若頭でさぁ!」

石本「…けっ。さてと。ようこそ雑司が谷へ、あんなちゃん。じゃあ連れ戻しに行くかね、お前さんの家族とやらを…(異変に気づき)ん?」

あんな「…くっ、えっ、えっく…切られちゃった…髪、切られちゃった…」

石本「あっ、ちょっと、おま」

あんな「うわーん、先輩との約束がぁー!切られちゃったよぉー!うええ(泣)」

石本「お、おま!?髪だぞ!?また伸びるだろ?おっ、おい、泣くな」

あんな「これじゃ結婚できないぃ!うええん(泣)」

アルマーニ遊人「(棒読み)あーららこーらら泣ーかした泣かしーた。いーけないんだいけないんだ」

石本「おろ、おろおろ、おろ」

○サンシャインシティ 時計台(夜)

ビル風が吹く時計台屋上。時報の歌を歌う武。

「らんらーん♪…ただいまより、午後11時をお知らせします。ピッピッピ、ポーン♪」

正樹の足音。

正樹「…武」

「…やぁ。久しぶり、正樹」

(To be Continued…)

(*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません)

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チョンチョンチョン
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