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【第7章】 『ようこそ池袋へ(後編)』 (池袋サンシャインDAY・5)

○サンシャインシティ 時計台 屋上(夜)

ビル風吹く屋上。あちこち倒壊している。アポロン改がもんどり倒れ火花を散らす。

正樹「(息を切らし)はぁ…はぁ…」

武の拍手

「凄い凄い。さすが正樹。僕が改造したアポロンを倒すなんて」

正樹「…はぁ…鍛えてるからな。時計屋は…肉体労働が多いんだ…はぁ…それより(武に銃を向け)次はお前だ、武」

「おいおい待ってくれよ。喧嘩じゃ君に叶わないて」

正樹「なら…降参しろ」

「うーん。どうしようかな…本当について来る気はないの?」

正樹「ない」

「…はぁ…正樹がついてきてくれたらなぁ。うーん、仕方ない、君のことは諦めよう。今夜はサンシャインシティだけ壊して帰るとするよ」

正樹「…地下にあった爆弾は全部解体したぞ。遠隔操作しても爆発しない」

「…なに?」

正樹「かって知ったるサンシャインシティだ。どこをどういじれば効率よく壊せるかわかってる。数が多すぎて解体できなかったが信管は全て外して来た…観念しろ、武」

「…はは、ははは!あははは!凄いよ正樹、サイコー!…でもおしいね!」

正樹「なんだと?」

「僕のほうがうわて、ということさ…はぁああ!」

武の物を操る能力(イメージ)。時計台の激しい起動音が鳴リ響く。

正樹「なっ」

「モノを操る力にレベルアップさ!時計台を自爆させる、地下の爆弾が誘爆に巻き込まれらどうなるかな?」

正樹、武に銃を向けて

正樹「武!」

「アポロン!」

アポロン改、武に飛びつき抱えて夜空に消える。

「(正樹に向かって)会えて嬉しかったよ、正樹!ちゃんと逃げてよ?生きてまた会おうね!」

正樹「武!武ぃいい!」

○サンシャインシティ 時計台 屋上(夜)

ビル風吹く屋上。時計の起動音が鳴り響き、時折火花を散らす。大きな時計の針の音が聞こえる。

(針の音はこの後シーンをまたいでじょじょに大きく早くなる。爆発までのカウントダウンのイメージ)

正樹、時計台のパネルを操作して、、

正樹「くそっ!止まれ!止まれよぉ!!お前、時計だろ!!時計なら時計屋の言うこときけや馬鹿野郎!お前は俺が作ったんだよ!?俺のこと覚えてんだろ!?だったら言うこと聞きやがれ!俺の声が聴こえないのかよ!?」

何度もビープ音が鳴る、正樹はパネルを力強く叩いて、

正樹「くそぉう!…何が時計屋だ…何が池袋を守るだ!!ヒーロー気取っても俺一人じゃ何もできやないじゃないか、馬鹿野郎…馬鹿野郎!」

パネルにつっぷして、泣き崩れる正樹。

正樹「…本当に何も出来ないのかよ…俺の力じゃ…誰一人護れねえのかよぉ…自分のケツを拭くことすら…。これじゃあ何のために池袋に留まっていたのかわからねえよぉ…。なぁ時計よぉ…俺はただ、みんなに幸せになってもらいたいだけなんだよ…そんな願いも聞いてくれねぇのか?ちくしょう……誰か、助けてくれよぉ…誰かぁ…」

正樹の携帯の着信が鳴る。電話を取る正樹。石本の声は電話越し

石本の声「よう、先生。まだ生きてるかい?」

正樹「…すまない石本、しくじった。逃げてくれ…みんなを…あんなを連れて池袋から…早く」

石本の声「なぁにをおっしゃいます、いつもの先生らしくない?まだ手駒があるでしょ?王手にはまだ早い」

正樹「…なに?」

石本の声「切り札、お持ちしましたよ?もうひと勝負と行きましょう」

下のほうから「そいや、そいや」という男達の掛け声と女の子たちの騒ぎ声がする。

○サンシャインシティ 乙女ロード大通り(夜)

「そいや、そいや」という大勢の男女の掛け声。御輿をかつぎ歩くゴスロリ服のヤクザたち。その周りを腐女子たちが取り囲む。御輿の上にはフードを被ったアルテミスが乗っている。

SP3「こちらαー2!いました、アルテミスです!顔は隠れて見えませんが、あの服装は間違いなく!…どこに?って、それが乙女ロードの大通りを!ゴシックロリータと呼ばれる服を来た野郎どもがかつぐ御輿に乗って!…ぐわぁあ!」

ゴスロリ服を来たアルマーニに蹴飛ばされるSP3

アルマーニ「あら、うっかり黒い何かを踏んでしまいましたわよ。本日ゴスロリ服着用以外の黒服様は参加お断りでーす、おほほ、そいや!そいや!」

山崎「さぁさぁ、みんなー!雑司が谷と乙女ロード合同のアルテミス祭りよー!」

ささみ「みんなー!あつまれー!時計台の歌姫、アルテミスの御輿だよー!さわごううたおうおどっちゃおー!そいやそいやー!」

女子たちの声「キャー/わー/アルテミスー!/かわいー」など

警官「ちょっと、君達!」

ささみ「え?あ?おまわりさん?」

警官「これは何の騒ぎだね?」

ささみ「何って、お祭りですよ。お祭り」

警官「それは見ればわかるが…あれは本当にアルテミスなのかい?ちょっとあらためさせてくれ」

ささみ「あ!ちょ、ちょっと!それは…」

警官「あの人形には盗難届けが出されているんだ。あれがアルテミスなら君達に話を聞かせてもらうよ?」

ささみ「ちょ、待って待って。ねえ、おまわりさんってばぁ!」

つくね「…きゃっ」

ドカッとつくねが警官にぶつかり、ドサッと倒れるつくね(無論つくねの策である)

警官「お?おお?」

ささみ「ああ!つくねちゃん!?大丈夫?」

つくね「…うん。ちょっとおまわりさんにぶつかって転んだだけ…いたた」

ささみ「ほんとに大丈夫?(警官に)ちょっとぉ!女の子に乱暴しないでくださいよぉ!」

つくね「待って、ささみちゃん。私が悪いの。私の不注意で転んだだけだから、おまわりさんを責めないで?ね?」

警官「え、あ…おう」

ささみ達に駆け寄るゴシックロリータと呼ばれる服を来た遊人。

遊人「(口で)ピピー!ピピー!ちょっと!何もめてるんだい君達ー!」

※おそらく着替えたときに、笛その他もろもろ私服に忘れてきたのかと。

警官「え?ああ!池袋署の署長!…その格好は…いったい」

遊人「うう、うるさーい!諸藩の都合だい!それより何があったの?女の子が倒れてるじゃあないか!」

つくね「ごめんなさい、私が悪いんです。私の不注意でこのおまわりさんにぶつかって、それで…」

遊人「なんだとぉ!?君、一般市民になんてことを!?」

警官「ええ!?ああ、いえ!本官は御輿の上のアルテミスを改めようとしただけで、その」

遊人「アルテミス?…何を言っているんだい?あれは、彼女たちが作った人形だよ」

警官「…は?」

遊人「ダミーだよ。あれはこの娘たちが作ったダミーなの。一般人がアルテミスを持ち出せるはずがないじゃないか。それとも署長の僕が嘘をついているというの?さぁ通してくれ、ここは僕にまかせて」

警官「え?あ!はい!失礼しました!」

遊人「さぁさぁ君達も祭りを楽しんでおくれ」

ささみ・つくね「はぁい、そいやそいやそいやー」

遊人の声「…ああ…ばれたら出世ロードが遠のくなぁ…くそー!……そいや!そいやー!(ヤケ)」

※つくね「作戦どおーり、ふふ」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

祭りの光景を見下ろす正樹。

石本の声「いろいろ聞いちゃいましてなぁ…乗りかかった船、いや御輿ですわ。搬入エレベーターからそっちに上げます。なぁに、一般人のご迷惑にならないよう程よいところで撤収しますんで」

正樹「…恩に着る」

石本「みずくせえなぁ。先生と俺たちの仲じゃないですか。それに、対価ならお嬢さんに頂ましたよ?」

正樹「…あんなが?」

石本「先生んとこもいろいろ事情があるようですが、黙ってちゃ愛想つかされますぜ?一度膝を突き合わせて話し合ったらどうです?ま、仕事が終わったらみんなで一杯やりましょうか、歓迎会ということでね」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

大きな時計の針の音がする。正樹に歩み寄るアルテミス。

正樹「アルテミス…お前なら、止められるか?」

アルテミス「(コク)」

正樹「…頼む、時計を止めてくれ」

時計台のパネルに手を当てるアルテミス。操作音(電子音)がして時計台が動きだす。

※音声は出来れば男性。

時計台音声「識別完了。人工知能搭載型インターフェース『アルテミス』と確認」

※武の声は時計台に残したメッセージ(スピーカー的なものから)。

武の声「ハハ!ハハハ」

正樹「…!?武!?」

武の声「あまいね、正樹。物を操れるようになったって言っただろ?時計台もアルテミスもとっくに僕のものさ!」

時計台音声「…警告。アルテミスを強制的に制御下へ移します」

正樹「…なっ!?」

パネルから火花が散り、アルテミスを襲う。

アルテミス(あんな)「!?」※息を吸う驚き

正樹「あ、アルテミスー!」

時計台音声「異常発生。警告、120秒以内に爆発の可能性あり。ただちに周辺都市を含むサンシャインシティの全システムの電源を強制終了させて下さい」

※以下時計台が警告音を発する。

「さぁ、これで手駒は尽きたかな?君の力はこんなもの?まだまだいける?…もっと魅せておくれよ?君の力を?奇跡を?さぁ!…あは、はは、ははは!」

アルテミス(あんな)「(ぼそっ)…うるさい……(パネルを叩いて)…うるさいっ!!お兄ちゃんはだまっててよ!」

正樹「…!?…アルテミス?」

アルテミス(あんな)「どうしてみんな私達の邪魔するの!?先輩はただ、みんなに幸せになってもらいたいだけなんでしょ!?」

正樹「…まさか、お前は…」

アルテミス(あんな)「(時計台に)ええい!キミもうるさい!時計なら時計屋の言うこと聞けー!…そして、先輩と二人きりで…膝をつきあわせて…話を、させ、ろぉおお!!※」

(※「そして」から構え、「話を」で力をため、「させろ」でパネルに向かって力を放つ。かめはめ波)

バサッと覆っていたフードがおち、顔を出すあんな。

正樹「…時計を操る、力…」

眩い光。時計台の電源が落ちる。

○(回想)石本の屋敷

あんな「…ダメ?」

アルテミス「…うん、きっと私じゃダメ、操られちゃう。だから、あんなちゃんが行って」

あんな「…え?私」

アルテミス「あんなちゃんなら大丈夫。大好きな人を、助けてあげて?」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

ビル風吹く屋上。明かりは消えシンと静まりかえっている。

あんな「静かですねぇ…」

正樹「…そうだな」

あんな「街の明かりがみんな消えちゃった。お月さまの明かりだけ…あれ?あっちの街だけ明かりがついてる?…あれって、雑司が谷?」

正樹「池袋でも雑司が谷は別格さ。雑司が谷はサンシャインシティの管理を受けていない。街の人が反対したんだ、いくら便利なもんでもホイホイ受け入れるもんじゃないって…古臭いんだよ、あの街は」

あんな「そうなんですか。でも私、あの街好きですよ。人のぬくもりっていうのかな?そういうのありますよね…。ああ、疲れたぁ…お風呂入りたぁい。さぁ、帰りましょう。あの明かりに向かって歩けばいいんですよね?大丈夫です、今度は道に迷いませんよ?先輩もいるし、暗闇で襲われそうになっても守ってくれますよね?」

正樹「…あんな」

あんな「はい?」

正樹「田舎へ戻れ」

あんな「…(きょとん)はい?」

正樹「俺は…この先、お前を守りきる自信がない」

あんな「…はぁ(相槌的な)」

正樹「時計屋ついで修行して、力をつけて、お前を守れるくらい成長したと思ってた。でも…やっぱり無理だった。これから先もこんなことが起こる。俺の手にあまったらお前を守りきれない」

あんな「だから、田舎へ戻れ…とぉ?」

正樹「あんな、わかってくれ、俺は、お前のためを思って」

あんな「そぉうぃやぁああ!!」

正樹の顔面に向かってキックをかます、あんな。吹き飛ぶアホ眼鏡。

正樹「がはっ、眼がっ!?眼がぁ!?顔面にドロップキックだとぉ!?眼鏡割れたらどうすんだ!馬鹿野郎!」

あんな「馬鹿野郎は先輩です!もうっ!どうして先輩は自分勝手なの!?信じらんないっ!あたしがどんだけ磨り減ってここまで来たかわかってるの!?」

正樹「…磨り減る」

あんな「爆弾膝枕して拳銃突きつけられて指切られそうになって髪切られてお兄ちゃんが爆弾好きの愉快犯だって!それは家庭の事情なの!家庭の事情は人それぞれでしょ!家庭の事情は家族で解決するもんじゃないの!?…だから、寂しいこと言わないで…あたしは…ただ、中川正樹と家族になりたいんです…ずっと前から…だから…寂しいこと…言わな…ひっく…こわかった、こわかったよぉ…せんぱぁい…」

○正樹の心の中

穂富「そうだな若人。ヒントをくれてやろう。…時計と同じさ。人間も歯車ひとつじゃ動かねえんだ。2つ3つ、歯車同士が噛み合って動いてる。お前さんにもあるはずさ、そいつがモノであるか想いであるか…または人であるか。なぁに、うっかり磨り減らしちまってもいいじゃねえか。そうでもしねえと、時計の針はすすまねえんだよ」

○サンシャインシティ 時計台 屋上

泣き崩れる、あんな。正樹は抱きとめながら。

正樹の声「磨り減らしたって構わない…か。師匠、こんな俺にもひとつあったよ…歯車」

正樹「…あんな」

あんな「ひっく…なに?」

正樹「すまな…いや…ありがとうな、お前のおかげで助かった」

あんな「ううん…いいの。家族だもん」

正樹「帰ろうな、家に」

あんな「うん、帰る、帰るの」

暗闇の中、ブォンと時計台の明かりがつく。

あんな「…うわっ、まぶし」

正樹「予備電源?時計台の照明が回復したのか…」

下の群集がざわめき、手拍子と「アルテミス」というコールが始まる。

あんな「え?なに?下が騒がしいですね…どうしたのかな?」

正樹「…ひょっとして…勘違いしてるんじゃないか?下の連中はお前のことアルテミスだと思ってるんだろ?時計台の明かりがついて、何かショーが始まると思ってるんだ」

あんな「…え?ええ!?そんな…どうしよう!?」

時計台から起動音。舞台がせり上がる。

音楽が流れ出す(可能ならエンディング曲に合わせて)

あんな「ちょ、ちょっと?時計台さん?どうしたの?」

正樹「そうだな…そうしないとこの騒ぎは収まらんな」

あんな「え?なに?先輩、どういうことですか?」

正樹「つまり…お前が代わりに歌えってことさ」

あんな「え?……えええ!?」

群集の拍手喝采。

(エンディング曲へ)

○エピローグ 乙女塾の店前

乙女塾に向かって歩く二人。

正樹「…おおげさだよなぁ、あいつら。…今更歓迎会なんてやらんでも…」

あんな「いいじゃないですか!私は嬉しいですよ?はい!」

正樹「おいおい騙されるなー?あれこれ理由つけてどんちゃんやりたいだけなんだよ…まったく…ん?」

短くなった髪をいじるあんな。

正樹「なんだ?落ち着かないな?」

あんな「…え?ああ、いえ。ちょっと襟のあたりがスースーして…」

正樹「ああ、石本にバッサリ切られたもんなぁ…。まぁ、そのうち伸びるさ」

あんな「え…ええ…でも…。…先輩との約束守れなかったなぁ…って」

正樹「は?…ふふ、はは…あはは!」

あんな「ちょ、ちょっと、笑うとこですか!?私は真剣にですねぇ!」

正樹「あーんな?」

あんな「えっ?はい?」

正樹「俺はショートカットのお前も、じゅうぶん可愛いと…思うぞ?…さ、行こう」

店のドアをあける正樹。

ささみ・つくね「おかえりなさいませ!ご主人様、お嬢様」

一同「ようこそ、池袋へ!」

【池袋サンシャインDAY・終】

(To be Continued…)

(*この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件などにはいっさい関係ありません)

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